公開日:2025年06月19日 更新日:2025年06月24日

「工事期間が長期化して工事代金の入金までに時間がかかり、資金繰りが圧迫されそう」「複数案件を同時に進行していて案件ごとの資金ギャップが重なり、慢性的な資金不足」…しかも、返済負担を抑えたい場合や民間金融機関では審査が通りにくい場合、公的融資制度の利用を考える経営者も多いことでしょう。
ところで、近頃注目のファクタリングはどうなんでしょう?頼れるのは「ファクタリング」か「公的融資制度」か?そんな疑問にお答えして、それぞれの特徴やスピード感、メリット・デメリットを徹底比較し、最適な選択肢をわかりやすく解説します。
目次
ファクタリングと公的融資、どちらを選ぶ?
低金利や長期返済など、有利な条件で資金を調達したい場合や、設備投資など明確な資金の使い道がある場合には、公的機関の融資制度の活用が有効です。特に創業間もない企業や小規模事業者にとって審査のハードルが低く利用しやすいのが公的機関の融資制度です。
一方で、「売掛金の回収に時間がかかる」「先行して多額の経費が必要」「季節変動や突発的な支出が発生しやすい」といった資金繰りの課題を抱えやすい業種もあります。建設業や運送業、製造業、人材派遣業、IT業、医療業などがその代表例です。
こうした業種の間で近年注目されているのが、ファクタリングという資金調達手段です。
ここでは、両者の基礎知識とその基本的な違いをご説明しましょう。
ファクタリングと融資の違いについて
そもそも、ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に売却して資金化する方法で、借入や融資制度ではありません。一方、融資は金融機関からお金を借りる取引で、返済義務が発生します。
また、ファクタリングの審査では、主に売掛先(取引先)の信用力や売掛金の支払期日が重視され、利用企業自身の財務状況は融資ほど重視されません。会計処理では、売掛金を「未収入金」に振り替え、手数料は「売上債権売却損」などで処理します。
これに対して、融資制度は金融機関や公的機関からお金を借りる仕組みで、審査基準は決算内容や経営状況、事業計画、返済能力など総合的な判断が行われます。会計処理では借入金を負債として計上し、利息や保証料は「支払利息」や「支払手数料」などで処理します。
公的融資にはどんな制度がある?
公的融資制度は、政府系金融機関や地方自治体が提供する融資制度で、民間融資に比べて低金利で資金調達できるというメリットがあります。
企業を対象とした主な公的融資制度には、以下のようなものがあります。
●日本政策金融公庫の融資制度
新規開業資金や、再挑戦支援など、創業を支援する融資制度があります。
●信用保証協会付き融資
信用保証協会が保証人となり、金融機関からの融資をサポートする制度です。
●地方自治体の融資制度(制度融資)
都道府県や区市町村が、中小企業や創業者を支援するための融資制度を設けています。
ファクタリングにはどんな種類がある?
ファクタリングは16世紀のイギリスで原型が誕生したとされ、貿易の支払い保証手段として発展しました。日本では1970年代からファクタリングの利用が始まり、当初は貿易業界や中小企業の資金繰り手段として導入されました。その後、法制度の整備やIT化により、近年では国内で急速に利用が拡大しています。
意外に古くから存在するファクタリングですが、企業が抱える資金調達ニーズやリスク管理ニーズの違いに対応するため、「買取型」と「保証型」の大きく2種類に分かれました。 以下で、ファクタリングの主な種類についてご説明しましょう。買取型ファクタリング
買取型ファクタリングとは、企業が保有する売掛債権をファクタリング会社に売却し、支払期日前に現金化できる資金調達手法です。売掛先からの入金を待たずに資金を得られるため、急な資金ニーズや資金繰りの改善に役立ちます。
主な種類は以下の2つです。
●2社間ファクタリング
利用企業とファクタリング会社の2者間で契約し、取引先に通知せずに売掛債権を現金化します。スピーディな資金調達が可能で、取引先との関係に影響を与えにくいのが特徴です。
●3社間ファクタリング
利用企業・ファクタリング会社・取引先の3者間で契約し、取引先も債権譲渡を承認します。手数料が比較的低く、透明性が高い取引形態です。
保証型ファクタリング
保証型ファクタリングとは、売掛先が倒産や支払い不能になった際に、ファクタリング会社があらかじめ設定した保証額まで保証金を支払うことで、売掛金の回収不能リスクを回避できるサービスです。利用企業は保証料を支払い、万が一の際に損失補填を受けられるため、貸倒対策やリスクヘッジとして活用されています。
主な種類は以下の通りです。
●特定売掛先保証型
特定の売掛先に限定して保証をかけるタイプで、信用力の高い取引先や大口契約先など、リスクを感じる相手に絞って利用できます。
●包括型保証(全取引先保証型)
複数または全ての取引先の売掛債権に対して保証をかけるタイプで、より広範なリスクヘッジが可能です。
●海外取引対応型
海外企業との取引で発生する売掛債権を保証するサービスで、国際取引のリスク管理にも利用されています。
その他こんなファクタリングも
その他、「買取型」「保証型」の枠組みに収まらない独自のサービス形態として、業界や取引の特性に応じて発展してきたファクタリングがあります。
主な種類は以下の通りです。
●一括ファクタリング
支払企業が複数の納入業者への支払いを一括でファクタリング会社に委託し、事務負担の軽減や支払手形の代替として利用されます。
●国際ファクタリング
海外取引における売掛債権の回収リスクを軽減するためのサービスで、国内外のファクタリング会社が連携して保証や回収を行います。
●医療(診療報酬)ファクタリング
病院やクリニック、介護事業者などが、診療報酬や介護報酬の債権をファクタリング会社に売却し、早期に資金化できる仕組みです。
ファクタリングvs.日本政策金融公庫のメリット・デメリット

ファクタリングは「スピード重視・返済不要」、公庫融資は「低コスト・長期安定」の違いが主たるメリットと言えるでしょう。
また、どちらにもデメリットはあります。ファクタリングは「高コストや業者選定リスク」、公庫融資は「時間と返済負担」が主な注意点です。どちらも自社の状況や目的に応じて慎重に選択することが重要です。
一覧表で比較:ファクタリングと日本政策金融公庫の違い
ファクタリングは「売掛債権の早期現金化」に特化し、スピードや返済不要が特徴であるのに対し、日本政策金融公庫の融資は「低金利・長期返済」で事業成長や経営安定を支援する制度です。 両者の特徴の違いを一覧表で比較してみました。
ファクタリング | 日本政策金融公庫の企業向け融資制度 | |
---|---|---|
資金調達の仕組み | 売掛債権をファクタリング会社に売却し、手数料を差し引いて現金化する | 政府系金融機関が直接企業に融資を行う |
審査基準 | 売掛先(取引先)の信用力や売掛金の内容が重視される | 企業の決算内容、事業計画、返済能力、将来性など総合的に審査 |
資金化までのスピード | 早い(最短即日~数日で資金化可能) | 比較的時間がかかる(審査・手続きに数日~数週間) |
返済義務 | なし(売掛債権の売却による資金調達) | あり(借入金として返済義務が発生) |
担保・保証人 | 原則不要 | 無担保・無保証人の制度もあるが、場合により必要 |
金利・手数料 | 手数料が発生(売掛金額や取引条件によって異なる) | 低金利(長期固定金利が多い) |
会計処理 | 売掛金を未収入金に振替、手数料は売上債権売却損などで処理 | 借入金として負債計上、利息や手数料は支払利息等で処理 |
主な利用目的 | 急な資金繰り、売掛金の早期資金化 | 創業、設備投資、事業拡大、経営改善など |
対象企業 | 売掛債権を持つ企業(業種問わず利用可能) | 中小企業、小規模事業者、創業間もない企業も対象 |
日本政策金融公庫の主な企業向け融資制度
日本政策金融公庫の主な企業向け融資制度には、以下のような種類があります。
●新規開業資金
創業予定者や創業間もない事業者向けの融資制度。
●女性、若者/シニア起業家支援資金
女性や若者、シニア層の起業家を対象とした創業支援融資。
●再挑戦支援資金
過去に廃業経験がある方など、再チャレンジする事業者向けの融資。
●経営者保証免除特例制度
経営者の個人保証を不要とする特例融資。
●創業支援貸付利率特例制度
創業期の事業者向けに、特別な低利率で融資する制度。
●賃上げ貸付利率特例制度
従業員の賃上げを行う事業者向けの特別金利融資。
●企業再建資金
企業再生・再建を目指す事業者向けの融資。
●新事業活動促進資金
経営多角化や事業転換など新たな事業活動を行う企業向け。
●企業活力強化資金
店舗の新築・増改築や機械設備導入など、企業の活力強化を目的とした融資。
●海外展開・事業再編資金
海外進出や事業再編を目指す企業向けの資金。
このほかにも、国民生活事業・中小企業事業・農林水産事業など、事業規模や目的に応じた多様な融資制度が用意されています。
※なお、「新創業融資制度」という名称は2024年度末で取り扱いが終了し、現在は「新規開業・スタートアップ支援資金」などに統合されています。
ファクタリングvs.信用保証協会付き融資のメリット・デメリット

ファクタリングも信用保証協会付き融資も資金調達の有効な手段ですが、ファクタリングは「スピード重視」、信用保証協会付き融資は「コストや安定性重視」という違いがあります。
ファクタリングは何と言っても最短即日で資金調達が可能で、「急な資金ニーズにも対応できる」点がメリットで、信用保証協会付き融資はその名の通り、「信用保証協会が保証人になる」ことで金融機関から融資を受けやすくなる点です。
どちらにもデメリットはあり、特に金利・手数料面で、ファクタリングは「比較的手数料が高く」、信用保証協会付き融資は「金利とは別に信用保証料がかかる」点に注意が必要です。
一覧表で比較:ファクタリングと信用保証協会付き融資の違い
ファクタリングは「スピード重視・返済不要」が特徴で、信用保証協会付き融資は「低コスト・長期返済・幅広い用途に対応できる」のが特徴です。
両者の特徴の違いを一覧表で比較してみました。
ファクタリング | 信用保証協会付き融資 | |
---|---|---|
資金調達の仕組み | 売掛債権をファクタリング会社に売却して現金化 | 金融機関からの融資に信用保証協会が保証を付与 |
資金調達可能額 | 売掛金の範囲内 | 数百万円~数億円(事業規模や制度による) |
審査基準・対象 | 売掛先の信用力が重視される | 申込企業の財務内容・返済能力・事業計画などが重視される |
資金化までのスピード | 最短即日~数日 | 1週間~数ヶ月(金融機関・保証協会の審査が必要) |
返済義務 | なし(売掛債権の売却) | あり(借入金として返済義務が発生) |
担保・保証人 | 原則不要 | 担保は原則不要、保証人も不要な場合が多い |
コスト(手数料・金利等) | 手数料:2社間8~18%、3社間2~9%程度 | 金利年1.5~3%程度+保証料(利息以外に保証料が発生) |
会計処理 | 売掛金の譲渡(資産の移動、負債計上なし) | 借入金として負債計上 |
信用情報への影響 | なし | あり(借入として信用情報機関に登録) |
主な利用目的 | 急な資金繰り・売掛金の早期現金化 | 事業拡大・設備投資・運転資金など幅広い用途 |
その他の特徴 | 赤字や税金滞納でも利用しやすい、取引先に知られるリスクあり | 返済不能時は保証協会が代位弁済、その後返済義務が移る |
信用保証協会付き融資は主に5種類
信用保証協会付き融資には、主に以下の種類があります。
●都道府県制度融資
都道府県が実施主体となり、信用保証協会の保証を付けて金融機関が融資を行う制度です。地域の中小企業支援や特定目的(創業、設備投資など)に応じた多様なメニューがあります。
●市区町村制度融資
市区町村が主体となる制度融資で、信用保証協会の保証を利用して金融機関から融資を受けます。地域密着型で、創業支援や小規模事業者向けの制度が多いのが特徴です。
●協会独自保証(協会制度)
各信用保証協会が独自に設けている保証付き融資制度です。全国統一の保証制度に加え、地域の実情やニーズに合わせた独自の制度が用意されています。
●無担保保証融資・有担保保証融資
保証協会付き融資は、担保の有無によって「無担保保証融資」と「有担保保証融資」に分かれます。
●責任共有制度対応保証・非対応保証
責任共有制度の有無によっても分類され、金融機関と保証協会が一定割合でリスクを分担する「責任共有制度対応保証」などがあります。
このほか、売掛債権や棚卸資産を対象とした保証、創業関連保証、特定目的保証など、地域や用途に応じて多様な制度が設けられています。詳細は各地域の信用保証協会や金融機関に確認するのが確実です。各地域の信用保証協会の連絡先は、全国信用保証協会連合会のサイトで確認できます。
ファクタリングvs.地方自治体のメリット・デメリット

ファクタリングは「オンラインでも申し込み」でき、自治体による融資制度は「身近な行政機関を通して借入れできる」ことが魅力と言えるでしょう。そして、どちらにもリスクや注意点はあります。
ファクタリングで最も注意しなければならないのは、「高額な手数料による資金繰りの悪化」です。手数料が高いと調達できる資金が大幅に減り、かえって資金繰りが悪化したり、多重債務に陥る危険性があります。
地方自治体の融資制度で最も注意しなければならないのは、「融資実行までに時間がかかること」です。相談から実行まで平均で数ヶ月かかる場合が多く、急な資金ニーズには対応しづらい点が最大の注意点です。また、制度内容が自治体ごとに異なり、手続きや必要書類も複雑な場合があるため、事前の確認と準備が不可欠です。
一覧表で比較:ファクタリングと地方自治体の違い
ファクタリングは「スピード重視・返済不要・売掛先重視」、地方自治体の融資制度は「低コスト・幅広い用途・返済義務あり・審査や手続きに時間がかかる」という特徴と違いがあります。
両者の特徴の違いを一覧表で比較してみました。
ファクタリング | 地方自治体の融資制度(制度融資) | |
---|---|---|
資金調達の仕組み | 売掛債権をファクタリング会社に売却し現金化(返済義務なし) | 金融機関からの融資に自治体の支援や保証が付く(返済義務あり) |
資金調達までのスピード | 非常に早い(最短即日~数日) | 時間がかかる(申請から実行まで数週間~数ヶ月) |
審査の対象 | 売掛先(取引先)の信用力が重視される | 申込企業の財務状況・返済能力・事業計画が重視される |
調達可能な金額 | 売掛金の範囲内のみ | 制度や事業規模により上限あり(数百万円~数千万円が一般的) |
コスト(手数料・金利) | 手数料が高い(2社間8~18%、3社間2~9%が相場) | 低金利(1~3%程度が多い)、保証料や利子補給制度あり |
返済義務 | なし(売掛債権の売却による資金調達) | あり(借入金として返済が必要) |
利用しやすさ | 赤字や税金滞納でも利用しやすい | 設立間もない企業や小規模事業者も利用しやすいが、書類や審査が必要 |
主な利用目的 | 急な資金繰り・売掛金の早期現金化 | 創業、運転資金、設備投資、経営安定など幅広い用途 |
その他の特徴 | 取引先に知られると信用に影響するリスクあり。売掛先が自治体の場合は条件が有利 | 利子補給や保証料補助など自治体独自の手厚い支援がある場合が多い |
都道府県や区市町村で異なる自治体の融資制度
地方自治体の融資制度(制度融資)は都道府県や区市町村ごとに内容が異なります。
一般的によくある自治体の融資制度は以下となります。
●創業融資(創業支援資金)
新規開業や創業間もない事業者向けの融資。ほとんどの自治体で設けられており、据置期間が長い、利率が低い、保証料や利子の補助が手厚いなどの特徴があります。
●小規模企業向け融資
小規模事業者や個人事業主向けの運転資金・設備資金の融資制度。融資限度額は比較的少額ですが、利用者が多いのが特徴です。
●緊急支援資金・経営安定資金
経営悪化や災害、感染症流行時など、緊急時の資金繰り支援を目的とした融資。新型コロナウイルス対策融資は特に利用者が多くなりました。
●設備投資資金・イノベーション支援資金
機械設備導入や新規事業・成長産業への投資を支援する制度。東京都では「イノベーション創出支援」「成長産業育成支援」など特徴的な制度もあります。
東京都23区・大阪市・名古屋市・横浜市といった、大都市圏の財政力のある自治体ほど利子や保証料の補助が手厚く、利用者も多い傾向があります。制度の内容・条件・手続きは自治体ごとに大きく異なるため、必ず地元自治体の公式情報を確認してください。
まとめ:急ぎの資金調達にはファクタリングがおすすめ!
公的融資制度を利用する最大のメリットは、低金利や無担保・無保証人など好条件で資金調達でき、返済負担を大きく抑えられることです。
そして、日本政策金融公庫や信用保証協会付き融資、自治体の融資制度は、いずれも長期返済が可能で高額資金にも対応しますが、審査や手続きに時間がかかり、返済義務も発生します。
一方、ファクタリングは売掛債権を売却して最短即日で資金調達でき、返済義務もありません。
また、ファクタリングは自社の業績が悪くても利用しやすい点が特徴です。特に取引先からの入金遅延や土木工事や不動産取引の現場でのトラブルにより突発的な支払いが発生したといった、急遽資金調達が必要な場合は、審査が早く即日入金も可能なファクタリングがおすすめです。